2008年7月8日火曜日
北海道新聞・卓上四季より
洞爺湖サミットに関連して一面の(卓上四季)というコーナーの記事です。
アイヌ民族の思想の一端を知る事につながるのではないでしょうか?
全文掲載します。
洞爺湖周辺のアイヌ民族は山の神を大切にしてきた。「虻田町史」によれば、それはおばさんの神だ。動物も草木もおばさんのものだから、食べ物が欲しいときは、きちんと断って山に入る△必要以上にとらず、自然に負担をかけすぎない先住民族の知恵だ。こんな話もある。山歩きをしていてクマがすむ穴をみつける。狩りを始める前に、他人が先に付けた印がないかを確かめる。他人の分を尊重するのだ△ここでトラブルが起きると、チャランケ(論議)で解決する。チャランケは「因縁」などとも理解されるが、本来はきちんとした交渉の場だ。よく話し合って、獲物を半分に分ける、先に印を付けた者のものにするなど、合理的な分け方を見つける△自然との付き合い、分配や議論のあり方。世界から首脳が集う北の大地に、先住民族の知恵が満ちている。洞爺湖を望む山の上で、現代社会の指導者は、どれほどの知恵をみせてくれるだろうか△このあたにりはチャランケ岩の伝説もある。隣の地域との境で、海岸にクジラが打ち上げられた。どちらのものにするか、指導者同士が話し合う。互いに譲らない。三日三晩も続けたら、クジラもろとも岩に変わってしまった△各国首脳が集まるのに、地球のためのまっとうな合意ができなければ、岩も同然と言われても仕方がない。自然の豊かさをよく感じ、よいチャランケをしてほしい。
2008年7月5日土曜日
第14回 カムイノミ・イパルチャの概要
第14回カムイノミ・イチャルパ祭開催要綱
1.開催趣旨
アイヌの人々は古くから北海道に居住し(北海道の地名の多くがアイヌ語がもとになっています。)、 長い歴史の中で培った口承文芸(ユーカラなど)や衣服、音楽、民具、儀式などに独自の文化を育み、そしてそれらは今日まで受け継がれてきました。
しかしながら、それらの文化・歴史について、日頃みなさんに知っていただく機会は少なく、十分には理解されていない状況にあります。
この事業は、「カムイノミ(神への祈り)」、「イチャルパ(先祖供養)」という伝統的儀式をとおして、みなさんに特色あるアイヌ文化・歴史にふれていただき、同時に「アイヌの民族としての誇りが尊重される心豊かな社会の実現」を目指して開催されるものです。
2.日 時 : 平成20年6月22日(日) 午前11時~
3.場 所 : 有珠善光寺自然公園 伊達市先住民族アイヌ慰霊碑前チセ広場
4.主 催 : 北海道ウタリ協会伊達支部・ 北海道伊達市・ 伊達市教育委員会
5.共 催 : NPO法人伊達観光協会
カムイノミ・イチャルパ祭 式次第
1.開会のことば
2.伝統儀式
1.カムイノミ (神への祈り) 2.イチャルパ (先祖供養)
3.主催者あいさつ
北海道ウタリ協会伊達支部長 小 野 祐 照
北海道伊達市長 菊 谷 秀 吉
4.来賓あいさつ
(社)北海道ウタリ協会理事長 加 藤 忠 様
北海道議会議員 中 山 智 康 様
伊達市議会議長 小 泉 勇 一 様
伊達市議会議員 吉 村 俊 幸 様
5.閉会のことば
6.交流会
○ ウ タ リ 伝 統 料 理 試 食 会
○ 古 式 舞 踊 披 露、ム ッ ク リ 演 奏(白老民族芸能保存会のみなさん)
┌──── カムイノミ〔神々の守護に感謝し平和な暮らしを願う〕 ────┐
アイヌの人たちは、天然現象や動植物、人間の作る道具などすべてに魂が宿り神の
国から使命を担って姿かたちを変えて地上に降りていると考えました。その魂は、人
間にとって有益なものだけでなく、天災や病気などにもあり、このうち、人間の生活に
必要なもの、人間の力のおよばない事象を神として敬いました。神々の護りと生活の
糧の提供があってはじめて、人びとの安定した平和な生活があります。そのような生
活のつづくことを祈願してこれまでの神々の護りに感謝を捧げるのがカムイノミ
[神への祈り〕の儀式です。
祭壇に捧げる神々
ランヌサ リンヌサ ランヌサ
(低い祭壇) (高い祭壇) (低い祭壇)
① ② ③ ④ ⑤ ⑥ ⑦ ⑧ ⑨ ⑩ ⑪ ⑫ ⑬左から順に
①ヌサコロフチ(穀物神) ②モシリカムイ(大地の神) ③キナスツカムイ(竜神)
④コタンコロカムイ(伊達市の守り神) ⑤チェップカムイ(魚の神) ⑥トマリォルンカムイ(泊の神)
⑦ペットルンカムイ(川の神) ⑧オイナカムイ(太陽の神) ⑨アットイカムイ(海の神)
⑩ウスヌプリカムイ(山の神) ⑪レラカムイ(風の神) ⑫ワッカウシカムイ(水の神)
⑬パセオンカムイ(先祖代々の神)

フチ〔おばあさん〕たちが中心となり、イナウ〔御弊〕と供物を捧げ、
先祖の霊を供養する儀式です。
イチャルパはメノコ〔女性〕だけで行うものです。
イチャルパヌサ 先祖供養場
イチャルパ=イチャラパともいう
トノトの品定めをする儀式です。 儀式に値するトノトで あ れば、
エカシ〔長老〕に「ピリカトノト〔素晴らしいできばえの御神酒〕です」と言う。
3.トゥキ〔酒杯〕、トゥキパスイ〔捧酒箸〕が参列者に配られる。
4.イヨマレクル〔棒酒役、酒を酌する役〕が、トノトを祭司であるエカシに
初めに酒を注ぎ、その後炉を囲む全員に注ぐ。 5.祭司の合図でカムイノミが始まる。トゥキパスイをトゥキの中にかるく浸してトノトをつけ、その滴を
カムイに捧げる。エカシが、初めにアペフチカムイ〔火の女神、通常は老婆と考えられている〕に
祈りを捧げる。 6.祈りが終わった後のトノトは、参列者自身が飲み干すか、後ろのメノコ(女性)に回す。 7.本来なら、様々なカムイ(13神)毎に繰り返し延々と行うが、本日は時間の制約もあるので1回
だけ行います。 8.カムイにイナウを捧げる。
カムイごとに担当する者を決めて、各自のカムイにトノトをつけ祈り、イナウに魂を吹き込み、
ヌサ〔祭壇〕に捧げる。 9.最後に、炉に立てておいたイナウを祭司が燃やして神の国に送り返し、オンカミ〔礼拝〕 をして、
儀式は終了します。
イレス オイナ フチカムイ 育てはぐくむ 祖母神様の
ナンコウッチャ サモロ アサレ キワ 御面前 を あけ開かせ まして
テエタ エカシ ウカウルカルロッア 昔の 祖父が 御造りになられた
シオイナ イナウ カムイ キレトッカシ 聖なる偉き御幣を 神様の御面前上に
アコ アシ アンキワ 御立て 致しまして
シンリッ ネロッア エカシ ウタリ 御先祖 でありまする 祖父様方が
ウポロセッキワ タパン シオイナ 唱えまして この 聖なる
ラクンモシロル アコ ホウッパ 下界へ 残され
キロッア イタウッ イポロセ アポロセ ましたる 唱え 言葉を お唱え
キワ ネヤクン アポロセ キ イタウッエイ 致します なら お唱え 致す言葉を
ウンピイッカ コイサウムノポ 疑うことも なさらずに
エイ エソコロ キワ ウンコレ キイヤン 御信じ なさって 下さい ませ。
アノミ キロッア シオイナネ シロルタ 御祭り 致しまする 聖なる 自然に
エイロッロッキ シノアパセレ キ 御鎮座ましまする 尊重致します る
シノアパセレ カムイ ウタリ オレン 聖なる 神様方 へ
アコ イナウ エプニアンキ カネ 御幣を 差し上げ ながら
イナウコロ シロマアシコロ ツキ 御幣付き 御神酒を 盃の
カウッケマッ エイカンバスイ コンナ 女神様の 捧酒箸を渡した 御神酒が
モウムナタラキ ノ 溢れて流れ出す様に
シオイナ カムイ ウタリ オレン 聖なる 神様 方 へ
アコ イブニキ ツラノ 御 あげ致します とともに
アリキンテ キロッア イナウコロ お捧げ 致しましたる 御幣付き
アシコロ イコカンペカキワ 御神酒を お受け取りなされて
カムイ コル シテコロカシ 神様 の 腕の上に
コオシンヌカ キワ ウンコレキヤン お受け取り なさって 下さいませ。
ポロセ ロッア シオイナネ イタウッ 唱えましたる 聖なる 唱え
イポロセ ラマウッ ウオイナネレ キワ 言葉の 霊を 尊重なされ まして
イコレキャン 下さいませ。
オンカミ イタッ アオシレパレ アンキナ 礼拝の言葉を 終わらせていただきます。
ネワネコロカ シンリップリ ウネロックス アパセケゥトム
(ではありますが 先祖の風習 であったので 尊い御心に)
コトキアニ コパスイスイェ クキシリネ。
(私は杯をささげ 棒酒箸を 向けるのです。)
トキタサ パスイタサ チコホサリワ ウンコレヤ タネアナッネ
(杯の方へ 棒酒箸の方へ お顔をお向け 下さいませ。 今日はもう)
シサムプリ アエイカウヌ ネヒオロタ アイェワピリカプ
(和人の風習 多く真似させられ 長いあいだ 私共が用いていた)
アイヌイタッ ネアコロカ アパンテルゥェ ネロッコロカ
(アイヌ語で あったけれども すっかり薄められて しまったけれど)
ネユンポカ アイヌプリ、 チキルスイクス。 タパンペネノ
(なんとかして アイヌの風習を 私共は復活させたいのです)
アパセケウトム チコモソソ ホシキトキ トノトピリカプ
(そこでこのように御心を 目覚めさせ 最初の杯 おいしいお神酒を)
カムイケウトム クコオンカミプ ネルウェネナ。
(位の高い神に 差し上げて いるのです。) チヤイコルシカワ アイヌウタラ ウタラオピッタ エプンキネワ
(この杯をお受け下され アイヌ達 人々全部を お守り下さるよう)
ンコレヤン。 テエタクルネノ ネピタキ クイェエニタンペ
(お願い申し上げます。 先祖達のようにアイヌ語を 上手に言うことが)
ソモネコロカ ヘルクワンノ アパセケウトモロ クコオンカミプ
(できないけれど 極簡単に 尊い神へ 私はお祈り)
ネルゥェネナ コンカミナー。
(申し上げ 礼拝いたします。)
(先祖へ供物を送る言葉)
2008年7月4日金曜日
取材報告
6/21(土)中居、札幌入り 竹下と取材打ち合わせ
6/22(日)「第14回 カムイノミ・イチャルパ祭」 取材
アイヌ民族博物館(白老町) 見学
6/23(月)(社)北海道ウタリ協会 訪問
取材 同協会 主任 貝澤和明氏
同協会 札幌支部副支部長 澤井政敏(アク)氏宅 訪問
取材 同澤井氏
Ⅱ.資料
①「第14回 カムイノミ・イチャルパ祭」配布資料
②アイヌ民族博物館 栞
③「国造神話 ~天地創造の神~、~人間くさい神~ 」
出典『アイヌの神話』 更科源蔵著
④取材写真一式
(人材育成プログラム4期生ブログ中の「アイヌ民族の信仰についての調査」に
アルバムを掲載しております。 http://picasaweb.google.co.jp/how.are.you.sapporo/ytZcDK?authkey=ug7_IlkdlRw
Ⅲ.取材報告
1.第14回「カムイノミ・イパルチャ祭」(伊達市 善光寺公園)11:00~14:30
カムイノミ=神々への祈り イパルチャ=先祖供養 添付資料①参照
受付で取材を申込み、資料を受け取った後に同行事の見学や撮影を行った。また、事前に取材申込をしていなかったが、行事終了後に、祭司を務めた千歳支部支部長 野本久栄氏や行事に参加されていたアイヌの方4名にお願いして、祭事を中心に話を伺いました。
<カムイノミの祭事>
・アイヌ文化の伝統継承の場という意味も含まれており、祭事に参加した者に、意義や作法
を伝える研修の場でもありました。実際に、参加者数人は、祭司から道具の扱い方等で
注意を受けていました。(器などを床におろしてはいけないこと等)
・イナウという削った木の棒に、酒粕とどぶろくをかけることによって、そのイナウが神々
になるとしています。
・大きなイナウは神道のひもろぎに近い形態をもっています。またイナウの後ろは神のみが
通る場所ということで、撮影するものも立ち入ることは禁じられていました。
・神々のイナウがある奥の祭壇よりも、座の真ん中にある炉を中心として、祭事が執り行わ
れていたようであります。それは、炉には、人間と神々を取り次ぐ“火の神”がいらっし
ゃるということからでした。
・本来は、アイヌ民族はいつもで家の炉で、イナウを用いて神への祈りを行っている、要す
るに生活に祈りが根付いていたということを言われていました。
・添付資料の様に、祈りの言葉(=祝詞)がありますが、さすがに暗記するのは難しいらし
く、祭司の方もかたわらに祈りの言葉がかかれた紙を置いて、祭事を進めていました。
・カムイノミはほとんど男性による儀式でしたが、外側に座る女性にも、お酒を皆でまわし
て飲む機会への参加は許されていました。
・祭司は全てのことに権限と責任をもつとされ、参加者の選定も自由とされていました。
アイヌ民族しか参加できないカムイノミも地域によってあるそうです。
<イパルチャの祭事>
・小さなイナウは仏式でいう位牌や、神道でいうご霊璽のようなイメージだと思っていたのだが、あくまで道具であって、イナウに先祖が懸かるわけではなかった。しかしイナウを通して先祖と繋がり、先祖と語り合い、供物を供えながら、自らも同じ物を食しつつ、先祖供養を行う。
・供物はお供えすることによって、ご先祖のいらっしゃるところでは、10倍以上になるとい
います。
・イパルチャを行うアイヌ民族には、墓参の習慣はありません。
・天(界)という感覚がなく、地の中に全て存在するということ。したがって、亡くなった
人の魂は、地の底にいらっしゃるという。
・イパルチャはカムイノミと異なり、女性が多く参加する儀式でした。
<アイヌ民族と日本の歴史>・
・アイヌ語にて祈りの言葉を流暢に話されていたので「アイヌ語は昔からお話しできていたのですか?」と尋ねると「(アイヌ民族のことを)ちょっと誤解しているね」ということから、アイヌ文化を認めずに、排除してきた日本の政策について、話されました。実際に話せる人は、アイヌ民族の人でも、年配の人を除けば、極めて少ないということです。
・アイヌ民族は、本土の人達を「和人(わじん)」と呼んでおり、それは、話しの端々で確認されました。日本人が“開拓”といって進めた行為は、彼らにとっては“侵略”以外の何物でもなかった一面も、彼らから強く感じさせられました。
・年配の方は語気を強くされ「俺は5才の時、母親を亡くした。その時の事は今でも憶えているし、アイヌ語を話したら殺されるという感じで、強制的に取り上げられてしまった」と話された。
<行事の様子>
・(社)北海道ウタリ協会 理事長は挨拶の時に、今という時にアイヌ文化振興法が成立し、
アイヌ民族が先住民族として正式に認められたことに触れ、アイヌ民族が辿ってきた数奇
な歴史を振り返り、感涙していた。
・伊達の市長や議員も参加しての、地元行政とアイヌ協会合同の行事でした。それぞれに
祝辞の中で、6月6日にアイヌが先住民族と認められたことを評価し、称えていました。
・また、神々へお酒をかける儀式では、本教の玉串奉奠の様に、来賓が指名され、それを
行うという形式で進められました。
・糸をはじきながら、口からの息で演奏する楽器の実演や、10人ほどのグループでの踊りが
披露された。
2.アイヌ民族博物館(白老町) 見学 15:45-17:20
敷地内には、アイヌ民族の典型的な家屋(チセ:自然の中にある材料で作られている)が大小5棟ほどあり、その中では、展示がされたり、定時に説明や楽器の演奏、踊りの披露がなされていました。チセの他に博物館があり、見学しました。
・敷地の入口を入って正面で来場者を迎える巨大な「コタンクルの像」からはアイヌ民族の
先住者としての自負や、誇りが感じられました。
・数年前にもここで実際に「熊の霊送り」を行ったこともあり、今でも熊を飼っています。
あちらこちらに熊の剥製も展示されています。
・シンガポールや韓国からの観光客も多く、アイヌ民族の説明員は3カ国語(中国語、韓国語、英語)を取り混ぜて説明し、皆を楽しませていた。
・博物館では、閉館前だったということもあり、学芸員の話しは伺うことはできなかったが、多数の展示物や資料から、アイヌ民族の歴史は感じられた。
・神への祈りについては、我々も参照すべき点があるのではないかと考えさせられました。
・民族衣装の着用コーナーや、手作り民芸品や鮭の燻製の販売コーナー等、アイヌ文化の
アピールも積極的に行われていました。
3.(社)北海道ウタリ協会(札幌市)訪問 9:50-12:05
事前に約束していた、同協会の貝澤和明氏とアイヌ民族のことについて広く対談し、取材をおこないました。また貝澤氏の協力により、アイヌ民族における神話~天地創造の神~について保管されている資料を調査し、閲覧・コピーを行う。
※資料③参照 国造神については下記ホームページも参照
http://enkan.fc2web.com/kantan/jp_hon/frame_a.html
・最初竹下が訪問した時は、信仰を学ぶより、まずアイヌ文化を学びなさい、という対応で
したが、今回は好意的であり、竹下の努力を評価してくださったようでした。
・古事記に関わる神話の記載は、非常に興味深いが、古老からの伝承がほとんどであるため、アイヌ民族の人も、知識や理解については、個々まちまちという印象があった。実際に記録として残っているものは、2種類ほどしか確認できなかった。
・2人の神様から、色々な神や人間が生み出されたという部分は、古事記に通じる部分も大いにある。が、アイヌ神話の発祥時期については、明確にできないところがあります。
・他宗教との関わり、という点に質問したところ、お葬式では、仏教のお世話になることも
あり、また貝澤氏の家の中にも仏壇があり、普通に拝んでいるそうです。
・アイヌ語の普及には、力を入れており、ラジオ講座やアイヌ語教室が開催されていること
を知りました。
4.(社)北海道ウタリ協会 札幌支部副支部長 澤井政敏(アク)氏宅(札幌市南区)
訪問取材 13:20-15:40
・当日朝、取材場所が自宅に変更の旨、連絡頂き訪ねると、玄関先の作業場にて数人の方がイナウを作成中でした。「社長にアポイントとったの?」と言われ、まず、会社を興しておられる事に驚いた。会社名にカムイが入っていたように記憶しています。そのことにはあまり触れませんでしたが、ここで製作したイナウが、種々の行事で使用されているらしいです。取材中、4人程のアイヌ人と思われるスタッフは、黙々とイナウを作り続けていました。
・アイヌ民族では、神への感謝を感じた時に、祈りを捧げているらしいです。
・信仰について興味深かった点は、全ての物や動物に魂が宿り、“カムイ(神)”と呼称していると思っていましたが、“カムイ”と名の付く物は限られており、畏怖、畏敬の対象となる物が多く、太陽や地形、それから動物であれば、熊や梟(フクロウ)、大鷲(オオワシ)等、同じ種族でも1種類の動物に限られていることが分かりました。
・「病気になった時に祈願するのですか」、という質問に対しては、「祈願もする」という返事
でした。そして続けて、「ただし、山野草でほとんどの病気は治してしまうんだ」と答えら
れました。アイヌに伝わる山野草の薬学があるそうです。
・澤井氏の持論としては、「人間は自然界の色々なものを、人間の領分を超えて我が物として、
取りすぎたから問題が起こっている。それは人間の数が増えすぎたからなのだ。だから、
もっと人間の数を減らさなくてはいけない」というものでした。自然の中で暮らすという
アイヌのあり方から、その考えが来ているのかどうかは分かりません。
補則.今後の取材について:ウタリ協会 千歳支部長 野本久栄氏宅(千歳市)
伊達市の「カムイノミ・イパルチャ祭」の祭司を務められた同氏に当日話しを伺った最後に、自宅に炉があることや、カムイノミも行っていることを聞きました。その上、ご自宅を訪問することの許可を、その場で口頭でいただきました。取材期間中は訪問できませんでしたが、後日北海道での専従者会にてアイヌ民族の取材について報告した際、学びを深める為、木村、竹下、奥野の現地専従者3人にて合同取材の提案をしました。現在同氏との訪問日程を調整中であり、訪問後はあらためて報告を行う予定です。
Ⅳ.まとめ
1.アイヌ民族は、生活や文化の中に神や先祖との祈りが密接に関わっている、素晴らしい
民族であるといえます。良いことも悪いことも、それぞれ良い神様や悪い神様が人間界に
いらっしゃった結果として、時には感謝し、時にはそれを避ける努力をして生きてきまし
た。
2.また一方「崇高で、人間をはるかに超越した次元にいらっしゃる」という我々のもつ神
様観だけでなく、「人間達が楽しくお祭りを行っていると、興味をもって人間界にいらっし
ゃる」という、どこか身近な、人間らしさを有する神様観も持っています。
3.「死んだら死者の魂は皆、地の底に行く」という感覚は、我々の持つ「死んだら天国から
地獄のどこかの霊界に行くという霊層界の概念」とは異なっています。そこから魂の永遠
性、より良い生を全うすべきである、という発想は見いだされません。しかし先祖を称え、
共々に祭り合うという想いは、確かにありました。
4.この度、素晴らしい取材の機会を許していただいたことに、感謝申し上げます。
本当にありがとうございました。4期生の皆さんの研究に、我々の取材が、少しでも役立て
ば光栄です。
以上
毎日新聞・北海道新聞・読売新聞
http://mainichi.jp/hokkaido/shakai/archive/news/2008/07/04/20080704ddr041040005000c.html
3世代結ぶアイヌ文化 先住民族サミット 参加の木幡さん
http://www.hokkaido-np.co.jp/news/culture/102615.php
アイヌ有識者懇を設置、ウタリ協理事長も委員に
http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/hokkaido/news/20080701-OYT8T00459.htm